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彼岸花が好き。秋になると描きたくなる、赤い花と筆文字

彼岸花が好き。秋になると描きたくなる、赤い花と筆文字

プロローグ 気づけば、彼岸花ばかり描いていました

筆文字を描いていると、季節によって描きたくなるものがあります。

桜だったり、紫陽花だったり、コスモスだったり。

その中でも、気づけば何度も何度も描いている花があります。

彼岸花。

これまで描いた作品を並べてみたら、

「私、ほんとに彼岸花が好きなんだなぁ(笑)」

と、あらためて思いました。

同じ彼岸花でも、描くたびに少しずつ違います。

力強く描きたい日もあれば、
ちょっと切なく描きたい日もある。

かわいく描くこともあれば、
今年はとうとう、実際には存在しない青い彼岸花まで描いてしまいました。

せっかくこんなに描いてきたのだから、今回は作品をご紹介しながら、彼岸花という花そのものについても、少し掘り下げてみようと思います。

調べてみると、

「えっ、そうだったの?」

という話が、思った以上にたくさんありました。

毒のこと。
お墓のそばに多い理由。
たくさんの不思議な名前。
赤だけではない色のこと。
そして「曼珠沙華」という美しい名前。

知れば知るほど、やっぱり不思議な花です。

ではまず——

どうして私は、こんなに彼岸花が好きなんだろう?

そんなところから、お話ししてみたいと思います。

① 彼岸花が咲く季節になると、なぜかワクワクする

私は、9月が好きです。

「9月」という響きそのものも、なんだか好き。

私の誕生日がある月だから、というのもあるけれど(笑)、
9月になると、それまでの暑い夏の空気が少しずつ変わっていくのを感じます。

ふと見上げると、空が青く、高くなっている。

朝晩には少し涼しい風が吹いて、
「あぁ、秋が来るんだなぁ」と感じる。

まだ暑い日もあるのに、ちゃんと季節は次へ向かっているんですよね。

そんな9月になると、私は毎年、描きたくなる花があります。

彼岸花です。

道ばたや田んぼのあぜ道に、ある日突然現れたように咲く、真っ赤な彼岸花。

緑の中にすっと伸びた茎。
その先に広がる、繊細で華やかな赤い花。

私は彼岸花が大好きです。

だから筆文字の作品にも、何度も何度も描いてきました。

同じ彼岸花なのに、合わせる言葉によって、かわいらしくなったり、ちょっと切なくなったり、力強くなったり。

気づけば、彼岸花を描いた作品がずいぶん増えていました。

せっかくだから今日は、
私の大好きな彼岸花のお話と、これまで描いてきた筆文字作品を少しご紹介したいと思います。

② 彼岸花って、ちょっと不思議な花

彼岸花というと、真っ赤な花を思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。

秋のお彼岸が近づくころになると、田んぼのあぜ道や土手に、突然すーっと茎を伸ばして咲き始める彼岸花。

「昨日まで、ここに何もなかったよね?」

と思うくらい、ある日突然現れるような気がします。

毎年見ているのに、その姿を見つけると私はうれしくなってしまいます。

でも彼岸花って、こんなに美しいのに、

「なんとなく怖い」
「縁起が悪い」
「摘んではいけない」
「家に持って帰ってはいけない」

そんなイメージを持たれることもある花です。

彼岸花には、本当に毒がある?

これは本当です。

彼岸花には「リコリン」などの有毒な成分が含まれていて、特に地中にある鱗茎(りんけい・球根のような部分)に多く含まれています。

誤って食べると、吐き気や下痢などの中毒症状を起こすことがあります。

ところが昔の人は、その毒をただ怖がっていたわけではありません。

その性質を利用して、田んぼや畑のあぜ、土手などに彼岸花を植えたといわれています。

土を掘る小動物などから、作物やあぜを守ろうとしたんですね。

毒があるから嫌われた花。

……と思っていたら、実はその毒が、人々の暮らしを守るためにも利用されていた。

そう考えると、彼岸花を見る目がちょっと変わりませんか?

どうして、お墓のそばに彼岸花が多いの?

彼岸花というと、お墓の近くに咲いているイメージもあります。

これも「不吉な花」と思われるようになった理由のひとつなのかもしれません。

でも、昔は土葬をしていた地域も多く、お墓を動物に荒らされにくくするために、有毒な彼岸花を周囲に植えたという説があります。

つまり、

「お墓に咲く不吉な花」だから植えられたのではなく、
大切なお墓を守るために植えられた花でもあった。

そう思うと、ずいぶん印象が変わりますよね。

花が咲いているのに、葉っぱがない!

そして私が彼岸花を見ていて不思議だなぁと思うのが、その咲き方です。

彼岸花が咲いているとき、よく見ると葉っぱがありません。

秋になると地面から茎がすーっと伸びて花を咲かせ、花が終わってから葉が出てきます。

冬の間は青々とした葉を茂らせ、春になるとその葉も枯れてしまう。

そして秋になると、また花だけが現れる。

つまり、花と葉が同時に姿を見せないんです。

そのことから「葉見ず花見ず(はみずはなみず)」という呼び名もあります。

花と葉が、お互いを見ることがない。

そう聞くと、なんだか少し切なくて、それもまた彼岸花らしいなぁと思います。

怖い名前をたくさん持つ花

彼岸花には、地方によって実にたくさんの呼び名があります。

中には、

「死人花(しびとばな)」
「幽霊花(ゆうれいばな)」
「地獄花」

など、ちょっとドキッとする名前も。

鮮やかな赤い色。

お彼岸のころに突然咲くこと。

お墓の近くでもよく見かけること。

そして毒を持っていること。

そうしたものが重なって、彼岸花に「怖い花」というイメージが生まれていったのでしょう。

「彼岸花を家に持ち帰ると火事になる」などの言い伝えもあります。

もしかすると、毒のある花を子どもたちがむやみに触ったり持ち帰ったりしないように、大人たちが伝えてきた知恵も混ざっているのかもしれませんね。

彼岸花って、赤だけじゃないの?

そしてもうひとつ。

彼岸花といえば「赤」ですが、彼岸花の仲間には、白やクリーム色、黄色、オレンジ、ピンクなど、いろいろな色があります。

ただし、ここはちょっと面白いところ。

一般的な赤いヒガンバナと、私たちが「白い彼岸花」「黄色い彼岸花」と呼んでいるものは、植物としてはまったく同じものとは限りません。

たとえば「白い彼岸花」と呼ばれるシロバナマンジュシャゲ。

名前は白ですが、真っ白だけではなく、クリーム色や淡い黄色、ほんのりピンクがかった花もあります。

鮮やかな黄色のショウキズイセンも、ヒガンバナと同じリコリスの仲間。

さらにピンクやオレンジ色のリコリスもあります。

だから、

「わぁ、黄色い彼岸花!」
「ピンクの彼岸花もある!」

と思っていた花が、正確にはヒガンバナそのものではなく、同じリコリスの仲間ということもあるんですね。

でも、筆文字アートを描く私としては、ここがまた楽しいところ。

真っ赤な彼岸花なら、情熱的に。

白なら、静かでやさしく。

黄色なら、明るく華やかに。

淡いピンクなら、かわいらしく。

同じような花の形でも、色が変わるだけで、そこに添えたくなる言葉まで変わってくる。

それも、彼岸花を描く楽しさのひとつだと思っています。

美しくて、ちょっと妖しい。

毒を持っているのに、昔の人の暮らしを守るためにも利用されてきた。

怖い名前をたくさん持っているのに、一方では「曼珠沙華(まんじゅしゃげ)」という、とても美しい名前も持っている。

知れば知るほど、彼岸花って不思議な花です。

そして私は、そんなちょっと一筋縄ではいかないところも含めて、彼岸花が大好きなのかもしれません。

③ 「曼珠沙華」という、もうひとつの美しい名前

彼岸花には「死人花」「幽霊花」「地獄花」など、ちょっと怖い呼び名がある一方で、私はとても好きな呼び名があります。

それが、

「曼珠沙華(まんじゅしゃげ)」

です。

なんだか、この四文字を見ただけでも美しいと思いませんか?

私は「彼岸花」という響きも好きですが、「曼珠沙華」と呼ぶと、同じ花なのに少し神秘的で、凛とした美しさが増すような気がします。

曼珠沙華は「天上の花」

「曼珠沙華」という言葉は、仏教の経典に登場する言葉に由来します。

サンスクリット語の「マンジュシャカ(mañjūṣaka)」を音で漢字に写したものとされ、仏教では天上に咲く花として語られています。

おめでたい出来事が起きると天から花が降る——そんな場面にも登場する、とても縁起のよい花なのだそうです。

これを知ったとき、私はちょっと驚きました。

だって彼岸花って、

「怖い」
「縁起が悪い」
「お墓に咲く花」

なんて言われることもあるでしょう?

ところが、もうひとつの名前をたどっていくと、

「天上の花」

なんです。

なんだか正反対ですよね!

「曼珠沙華」と「彼岸花」

ここで、ちょっと面白いことがあります。

現在の日本では「曼珠沙華=彼岸花」の別名として普通に使われています。

でも、もともと仏教の経典に出てくる曼珠沙華が、植物としての現在の彼岸花そのものを指していた、と単純に言い切れるわけではないそうです。

日本に伝わる中で、美しく鮮やかな彼岸花と「曼珠沙華」という言葉が結びついていったんですね。

そう考えると、名前って面白いなぁと思います。

私は、この二面性が好き

真っ赤に燃えるような色をしているのに、どこか儚い。

華やかなのに、少し寂しげ。

毒があるのに、人々の暮らしを守るためにも利用されてきた。

「死人花」と呼ばれる一方で、

「天上の花・曼珠沙華」とも呼ばれる。

私は、彼岸花のこういうところが好きなんだと思います。

ただ「かわいい」だけでもなく、
ただ「きれい」だけでもない。

見る人によって、感じるものが違う花。

だからこそ、筆文字と合わせたときにも、いろいろな表情を見せてくれるのかもしれません。

力強い言葉を添えてもいい。

切ない言葉を添えてもいい。

優しい言葉を添えてもいい。

同じ彼岸花を描いているのに、言葉ひとつで作品の世界がガラッと変わる。

だから私は、毎年また彼岸花を描きたくなるのかもしれません。

そして気づけば——

今年もまた、彼岸花の筆文字作品が増えていました(笑)

ここからは、そんな私の大好きな彼岸花を描いた作品を、いくつかご紹介したいと思います。

④ 青い彼岸花はあるの?

赤、白、黄色、ピンク……。

彼岸花の仲間にはいろいろな色があります。

では、

「青い彼岸花は?」

残念ながら、自然界に私たちがイメージするような鮮やかな青い彼岸花はありません。

でも「青い彼岸花」と聞いて、ピン!ときた方もいるのではないでしょうか。

そうです。

『鬼滅の刃』に登場する「青い彼岸花」。

私も『鬼滅の刃』が大好きなので、この「青い彼岸花」という言葉には、どうしても惹かれてしまいます。

鬼舞辻無惨が探し続けた「青い彼岸花」

物語の中で、鬼の始祖である**鬼舞辻無惨(きぶつじむざん)**が、長い年月をかけて探し続けていたもの。

それが「青い彼岸花」です。

無惨は人間だったころ、重い病を治療するために医者から薬を処方されます。

その薬に使われていたのが、青い彼岸花。

ところが無惨は、薬の効果が現れる前に医者を殺してしまいます。

その後、鬼となった無惨には驚異的な力が備わりましたが、どうしても克服できないものがありました。

太陽の光です。

そこで無惨は、薬を完成させて太陽を克服する手がかりを求め、青い彼岸花を探し続けることになります。

けれど、どれだけ探しても見つからない。

物語の終盤で、その理由につながる秘密が明かされます。

青い彼岸花は、一年のうち限られた時期、それも昼間にしか咲かない、とても珍しい花だったのです。

太陽の下を歩くことのできない鬼たちが、必死になって探していた花が、太陽の光の中で咲いていた——。

私はこの設定を知ったとき、

「なんて面白いんだろう!」

と思いました。

無惨が長い年月をかけても手に入れられなかったものが、自分が決して歩くことのできない昼間の世界に咲いていた。

なんだか皮肉で、切なくて、とても印象に残ります。

本当にはないからこそ、美しい

実際の彼岸花にはない、鮮やかな「青」。

だからでしょうか。

想像の中で青い彼岸花を思い浮かべると、赤い彼岸花とはまったく違う、幻想的で神秘的な美しさを感じます。

赤い彼岸花が「炎」なら、

青い彼岸花は「月」や「夜」のよう。

……あれ?

物語の中では昼間に咲くのに(笑)。

でも、そんな現実にはない花だからこそ、私はとても惹かれます。

もし本当に青い彼岸花が咲いていたら、一度でいいから見てみたい。

そして筆文字アーティストとしては……

やっぱり、

青い彼岸花も描いてみたくなります。

現実にはない花なら、どんな青にするかも自由。

深い藍色でもいい。
透き通るような水色でもいい。
青から紫へ変わるような花びらでもいい。

「存在しない花を、自分の筆で咲かせる」。

それもまた、絵を描く楽しさなのかもしれません。

⑤ やっぱり私は、9月が好き。彼岸花が好き。

私は、9月が好きです。

でも考えてみると、9月が好きなのは、ただ秋が好きだからというだけではないのかもしれません。

夏が終わっていくころ、私は毎年ちょっとだけ物悲しい気持ちになります。

高校野球の甲子園大会が終わると、

「あぁ、夏が終わったなぁ……」

と思う。

真っ青な空に大きな入道雲を見ても、

「こんな夏らしい空が見られるのも、あと少しかな」

と思う。

そして、24時間テレビが終わるころになると、私の中ではいよいよ夏の終わりです。

暑くて、にぎやかで、なんだか毎日せわしなかった夏。

それが少しずつ遠ざかって、時間の流れまでゆっくりになっていくような気がします。

9月になると、空気が変わる


9月に入ると、雨の日が増えてきます。

天気予報から「秋雨前線」という言葉が聞こえてくる。

まだ暑い日はあるけれど、真夏とは明らかに空気が違います。

ふと空を見上げれば、青が少し深くなって、空が高くなったように感じる。

朝晩には涼しい風が吹く。

そして私にとって、とってもうれしい変化がもうひとつ。

昼間に、わんこのお散歩ができるようになること。

真夏のアスファルトは、本当に熱くなります。

昼間なんて、とても歩かせられません。

でも9月になって少しずつ涼しくなってくると、地面の熱さもやわらいで、

「あ、今日はお昼でも歩けそうだね」

という日がやってきます。

そんな小さな変化に気づくたび、

「秋が来たんだなぁ」

と思います。

そして、彼岸花を見つける

そんな季節に、道ばたや田んぼのあぜに、ある日突然、真っ赤な花を見つけます。

彼岸花です。

「あ、咲いた!」

毎年見ているのに、見つけるとうれしい。

そして、なぜだかわからないけれど、私は彼岸花を見るとほっとするんです。

夏が終わってしまう寂しさがあって、

少しずつ風が変わって、

雨が降って、

空が高くなって、

わんこと昼間に歩けるようになって。

そして最後に彼岸花が咲く。

私にとって彼岸花は、

「今年もちゃんと秋が来たよ」

と知らせてくれる花なのかもしれません。

だから、ほっとするのかな。

9月という響きも好き

そして私は、「9月」という言葉の響きそのものも好きです。

自分の誕生日がある月だから、というのももちろんあります(笑)。

でもそれだけじゃない。

夏から秋へ。

にぎやかな時間から、少し静かな時間へ。

暑さの中で頑張っていた心や身体が、ほんの少しゆるんでいく季節。

そんな9月の空気が、私は好きなんだと思います。

そして、その9月に咲く彼岸花が大好きです。

真っ赤で、華やかで、ちょっと妖しくて。

怖い名前もあれば、「曼珠沙華」という美しい名前もある。

毒を持ちながら、昔の人の暮らしを守ってきた歴史もある。

花と葉は出会わず、秋になると突然すーっと茎を伸ばして花を咲かせる。

知れば知るほど、不思議な花です。

だから私は今年も、彼岸花を描きます。

きっと来年の9月も、

道ばたに真っ赤な彼岸花を見つけたら、

「あぁ、秋が来たね」

って、ほっとするんだと思います。

そしてまた、筆を持ちたくなる。

やっぱり私は、9月が好き。
そして、彼岸花が大好きです。

投稿者プロフィール

幸筆 好美
幸筆 好美旅する筆文字アーティスト
旅行会社の添乗員をしながら、幸筆認定講師として教室を開校。本業で手に入れた世界中の珍味をおすそわけしながら、面白い体験談などを交えつつ筆文字を教えています。静岡県出身の幸筆(さちふで)という筆文字を、日本だけでなく世界に広げるのが目標です。

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